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2023.11.28 Tuesday

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連載エッセイ7 変わり始めた処分の現場

2013.04.27 Saturday

変わり始めた処分の現場   飯田基晴 

 各自治体の動物愛護センターに収容された犬と猫の殺処分には、主に二酸化炭素が使用される。他の犬や猫と一緒に殺処分機へ入れられ、窒息死させられることは、恐怖や苦しみもあるだろう。

 センターでは獣医師が勤務していて、収容期限を迎えた犬や猫の処分にもたずさわる。その覚悟を話してくれた獣医師がいる。「動物を嫌いな人が処分するのと、好きな人がやるのでは、そのときの扱いが違ってくる。最期ぐらい、動物を好きなヤツがみてやったらいい」

 収容された犬と猫を、できる限り救おうと頑張る施設も増えている。それを自分の使命として語る獣医師もいた。「愛護センターでいかに殺処分数を減らしていくか。これが大前提で、私は生きがいを感じてます。そうして多くの命を助けることは、獣医師冥利(みょうり)に尽きることです」

 動物の苦痛を軽減させる、新たな処分方法を導入した自治体もある。2009年開設の下関市動物愛護管理センターでは、麻酔吸入による殺処分を取り入れた。麻酔剤の再利用でコストを抑えることにより実現した、行政機関では世界初の方式だ。これは市民の働きかけ、市長の決断、職員の努力が実ったものだ。
 その様子を見せてもらった。2〜3分で意識を失い眠りにつき、その後、心停止となる。従来の二酸化炭素に比べれば、かなり安楽死に近づいた印象だ。

 行政も、処分から救う方向へと変化しつつあるが、まだ課題もある。予算も人手も足りず、できないことも多い。より動物に優しい施策を実現していくには、どうしたらいいのか?
 ボランティアとして40年以上動物にかかわってきた女性の言葉が印象に残っている。「行政を変えるためには、文句を言う必要もある。でも、単に行政批判で済まさず、私たちができることを実践するのも必要です」(映画監督)

連載エッセイ6 現実伝える難しさ

2013.04.25 Thursday

現実伝える難しさ   飯田基晴  

 捨て犬、捨て猫にかかわる人々を描いた映画「犬と猫と人間と」では、さまざまな現場を取材したが、取材を拒否されることも少なくなかった。
 捨て猫が多いことで知られる地域を訪れたときのこと。エサやり、病気の治療、不妊・去勢の手術など、ボランティアとして猫を世話する人たちに取材を依頼したところ、こんな返事が返ってきた。
 「テレビや新聞、雑誌で活動が紹介されるたびに捨て猫が増えた。猫が多いなら1匹くらい捨ててもいいだろうとか、ここなら捨てても生きていけると考えるのでしょう。でも私たちも限界、これ以上は無理。だからもう取材は一切受けません。この地域も取り上げないでほしい」
 また別の地域でボランティアをしている女性からは、こんなふうに断られた。
 「野良猫の世話は、家族に秘密だから取材なんてダメ。猫のためにいくら使ったか、夫にはとても言えない」
 保健所や動物愛護センターなど、行政の施設に収容動物の撮影を依頼したときも、取材拒否が続いた。理由は市民からの苦情だ。捨てられて処分を待つ犬や猫の姿が報じられると、殺すなんてかわいそう、といった感情的な非難が多く寄せられるという。
 処分するだけでなく、少しでも救おうと努力している施設も少なくないのだが、見る人には、悲惨さばかりが印象に残るのだろう。
 本当は言いたいこともあるし、人々に現実を知ってほしい。でも表に出れば、また捨てられたり、非難も浴びる。それぞれの人から、そんな葛藤(かっとう)を感じた。
 動物愛護の活動を単純な美談にまとめたり、捨てられた動物の悲惨さを強調するだけでは、こうしたことが繰り返されるだろう。現状をきちんと見つめて考えられる映画にしたいと、あらためて思った。(映画監督)

連載エッセイ5 かわいい? かわいそう?

2013.04.15 Monday

かわいい? かわいそう?   飯田基晴

 「かわいそうで、そんな映画見られない!」
 捨てられた犬と猫についてのドキュメンタリー映画「犬と猫と人間と」を宣伝していると、こうした反応が少なくない。
 確かに処分を待つ犬や猫の姿などは、見ればつらいものだ。テレビでも、しばしば「動物たちがこんなにかわいそう」と、悲惨さを強く訴えるような番組を目にする。映画を見たくないという人々は、どうもそんな重苦しい映像が延々続くことを想像するようだ。
 だが、作った僕としては、いくら深刻な問題をテーマにしていても、見た後で世の中に対してウンザリするような映画には、したくなかった。大切なのは、観客に事実をしっかりと見つめて考えてもらうこと。そのために、悲惨さだけでなくユーモアも交え、薄っぺらではない希望も感じられるよう、取材を積み重ねてきた。
 見たお客さんからは、よくこんな感想を頂く。
 「見に来るかどうか、すごく迷った。でも、思ったほどつらい映画じゃなくて、笑える場面や希望もあった。もっと多くの人に見てもらいたい。周囲に勧める」
 「帰ってから、うちのコを抱きしめて最後まで世話するって、あらためて誓った」
 そんなふうに、この映画に意義を感じてくれた方が多く、ぼく自身が励まされてきた。
 今の日本人には、極端なほどの「カワイイ」志向がある。それが昨今のペットブームにもつながっている。カワイイ姿だけ見ていたい、そんな気持ちは分かる。
 だが、犬も猫もぬいぐるみではないのだから、かわいがるだけでは済まない。そして、捨てられたり、処分されたりするのは、犬や猫の問題ではなく、人間の側の問題なのだ。
 かわいそうな姿から目を背けることが、一番「かわいそう」なことなのだと、どうか気付いてほしい。(映画監督)

連載エッセイ4 しろえもんの「しつけ」

2013.04.12 Friday

しろえもんの「しつけ」   飯田基晴

 映画「犬と猫と人間と」では、捨てられた犬や猫をめぐり、さまざまな現場を描いた。
 その中で「しろえもん」という名の犬が、まるで主役のように繰り返し登場する。動物愛護団体の施設に保護され、そこで新たな飼い主が決まって一度はもらわれたが、やんちゃで力が強く甘がみもきついため「手に負えない」と、施設へ返されてしまう。
 人なつっこい犬なのだが、興奮すると細長いシッポをビュンビュンと振り回し、猛スピードで駆けまわる。こうなると施設のスタッフでも、扱いに困るほどだ。このしろえもんに新たな飼い主を見つけてやれるよう、施設でしつけに取り組む様子が、映画の縦軸となった。
 犬のしつけには、大別すると2種類のやり方がある。罰を与えるしつけと、ご褒美を与えるしつけだ。くしくもしろえもんは、その両方を受けることになった。全身で喜怒哀楽を表す犬なので、それぞれのしつけを受けているときの様子は、見ものでもある。
 最初に受けたのは、人間の言うことを聞かなければ、体罰として、チョークチェーンという首輪代わりの鎖を引っ張られるしつけだった。一定の成果はあったものの、しろえもんには強いストレスがかかってしまう。 そこで今度は、言うことを聞けば、ご褒美として食べ物をもらえるしつけに切り替わる。食いしん坊なので喜んでしつけに取り組み、どんどん学習を重ねていく。
 ところで、「しつけ」というと、犬に行儀を教え込むもの、そんな印象があるだろう。だが、褒めて伸ばすしつけでは、飼い主が犬の性質を学ぶことも、大きな割合を占めている。
 映画でも、しつけを通して、しろえもんと施設スタッフがお互いに理解を深め、笑顔が増えていく様子を描いた。そこには異なる種である人間と犬が、共存するための知恵があるように感じた。(映画監督)


「犬と猫と人間と2」劇場初日決定! これまでに寄せられたコメント

2013.04.10 Wednesday

「犬と猫と人間と2 動物たちの大震災」、渋谷・ユーロスペースでの公開初日が6月1日(土)に決定しました!
1日4回上映で、1)11:50、2)14:00、3)16:40、4)18:50です。

終了はまだ未定ですが、大勢来て頂ければ公開も延びます。
そして東京でお客さんの入りがいいと、地方の上映館が増えます!
ぜひぜひ、どうか、お早めに!!

また、前売り鑑賞券の販売がまだ伸び悩んでいます。
ぜひ、お得な全国共通特別鑑賞券(前売り券)をお買い求め頂けたら幸いです。
詳しくはこちらから。http://inunekoningen2.com/news/?p=25


それから、劇場公開に向けてコメントも集まってきました。
それぞれに思いのこもった言葉を寄せて頂き、本当に感謝しています。

犬童一心(映画監督)
「どうせ死ぬはずだったんだから見殺しにしたっていいじゃないか?」。身の丈のカメラアイが捉える、震災の中に投げ出された動物の姿、人の心。動物達の目がじっとカメラを見つめる。その目の奥に宿った命の光。そして、いつしか、どんなときも人であろうとするために闘う「抵抗」の物語が浮かび上がってくる。心揺さぶられた。ローポジションは前作に続き、粘り強く真摯な、必見の作品を生み出した。観て、語りあって欲しい映画だ。

清水浩之(ゆふいん文化・記録映画祭コーディネーター)
《経済価値》なしとされた牛の救援に奮闘する人々を描いた後半が素晴らしい。
「出会ってしまった命だから」という言葉に、ヒトとしての《仁義》を再認識させられる。ボランティアの人たちはなぜ孤立もおそれず救援活動を続けるのかを、宍戸監督&飯田Pのコンビが丁寧に解き明かした構成が見事。「バカを承知で」共闘に乗り出す牧場主さん、まるで任侠映画の池部良みたいにかっこよかった!

松本秀樹(ドッグライフコンサルタント)
インタビューしている時にその対象者さんが首から下げている放射能測定器がけたたましく鳴り響く。 本物?と疑いたくなるような動物達の死体が映る。紛れもない真実であるそれらを見ている間中、自分が自分に問いかける「生きるとは?」「生きているとは?」「生かすとは?」「命とは?」「正義とは?」・・・ この映画のショッキングな場面を見て、なるべく多くの人の心がショックを受けてもらいたいと思いました。 その心のへこんだ部分、壊れた部分から問いかけた答えが返ってくるような気がします。

渡辺眞子(作家/「捨て犬を救う街」)
いのちは儚い。心はもろい。けれど、たくましい。
この作品が暗闇に射す一筋の光となり、次の世代への道しるべとなってくれますように。

杉本彩(女優/作家)
動物たちのいのちを見捨てる国に、人の幸せなどあるはずがない。
だから人の幸せを考えるとき、この作品に映る動物たちの姿から、目を背けてはいけないのだ。