連載エッセイ6 現実伝える難しさ
2013.04.25 Thursday
現実伝える難しさ 飯田基晴
捨て犬、捨て猫にかかわる人々を描いた映画「犬と猫と人間と」では、さまざまな現場を取材したが、取材を拒否されることも少なくなかった。
捨て猫が多いことで知られる地域を訪れたときのこと。エサやり、病気の治療、不妊・去勢の手術など、ボランティアとして猫を世話する人たちに取材を依頼したところ、こんな返事が返ってきた。
「テレビや新聞、雑誌で活動が紹介されるたびに捨て猫が増えた。猫が多いなら1匹くらい捨ててもいいだろうとか、ここなら捨てても生きていけると考えるのでしょう。でも私たちも限界、これ以上は無理。だからもう取材は一切受けません。この地域も取り上げないでほしい」
また別の地域でボランティアをしている女性からは、こんなふうに断られた。
「野良猫の世話は、家族に秘密だから取材なんてダメ。猫のためにいくら使ったか、夫にはとても言えない」
保健所や動物愛護センターなど、行政の施設に収容動物の撮影を依頼したときも、取材拒否が続いた。理由は市民からの苦情だ。捨てられて処分を待つ犬や猫の姿が報じられると、殺すなんてかわいそう、といった感情的な非難が多く寄せられるという。
処分するだけでなく、少しでも救おうと努力している施設も少なくないのだが、見る人には、悲惨さばかりが印象に残るのだろう。
本当は言いたいこともあるし、人々に現実を知ってほしい。でも表に出れば、また捨てられたり、非難も浴びる。それぞれの人から、そんな葛藤(かっとう)を感じた。
動物愛護の活動を単純な美談にまとめたり、捨てられた動物の悲惨さを強調するだけでは、こうしたことが繰り返されるだろう。現状をきちんと見つめて考えられる映画にしたいと、あらためて思った。(映画監督)
コメント
- by すもっち
- 2013/04/26 11:17 AM
コメントする
トラックバック
この記事のトラックバックURL
現実は厳しくて・・私も何かお役に立ちたいけれど
何をどうして良いのかわからず・・
自分にそれの強さがあるのかと自問自答・・
今日、朝ふと・・地元で保護活動をされている人を探そうと・・
思いました。
少しでも・・捨てられる命が減るように・・
幸せな猫生・犬生が送れるように・・
うまく言葉に出来ず申し訳ありません。