特集上映「ハマを見つめたドキュメンタリー映画」イベント報告

2017.11.10 Friday

11/3特集上映「ハマを見つめたドキュメンタリー映画 ―変わりゆく街、子どもたち」から1週間が経ちました。

遅くなりましたが当日の報告です。

 

1作目、『中華学校の子どもたち』上映には親子連れの姿もあり、中国語と日本語が混ざり合う和やかな雰囲気で始まりました。映画の中での、子どもたちの授業中のひそひそ話や茶目っ気ある仕草に笑い声もあがり、楽しんでご覧頂いていることが伝わってきました。

上映後のトークでは、監督の片岡希さんと、映画に登場する横浜山手中華学校の馬 晶先生からお話を頂きました。
 

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片岡さんは中華学校の牧歌的、家族的な雰囲気に惹かれて撮影に入り、学校や街の方々にとてもよくしてもらい、その関係はいまも続いていると話していました。
馬先生は、映画撮影後に新校舎に移転したため、映画が旧校舎の雰囲気を伝える貴重な記録であり、さまざまな世代の貴重な証言記録にもなっていること、時代とともに学校も街も変化はあるが、若い世代にも伝統文化や愛校心、コミュニティの繋がりが受け継がれていることなどを語って頂きました。

そして、映画に登場した男の子、シャオリンがサプライズゲストとして登場! 愛らしいやんちゃ坊主が明るい好青年に育った姿に客席から暖かな拍手があがりました。

 

2作目の『日曜日の子供たち』は、撮影の舞台となった鶴見区小野町の方々もいらしてくださり、満員となりました。

 

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上映後のトークでは、監督の堀田泰寛さんがこの作品に込めた思いを語ってくれました。自分の生き様がすべて投影された映画だと語る姿が印象的でした。

また長らく小野町近くの病院で医師として地域の人々を見守ってきた冨岡先生からもご挨拶を頂きました。

 

この上映に向け、地域の方々にもご協力頂いて映画に登場する子どもたちを捜していたのですが、今回は「私です!」という方にお会いすることはできませんでした。
しかし客席に当時この場所で遊んでいたという男性がいらっしゃり、その頃のことを聞かせてくれました。

上映後、地元の方々がとてもいい表情で会場を後にされたと聞きました。ともに楽しんで頂けていたら嬉しい限りです。

 

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3作目の『どっこい! 人間節 寿・自由労働者の街』上映は、補助席まで埋まる賑わいとなりました。

上映後のシンポジウムでは、片岡希さん、堀田泰寛さんに加え、映画監督の中村高寛さん、加藤彰彦さん(横浜市立大学名誉教授/前沖縄大学学長)にご登壇頂きました。
加藤彰彦さんは撮影当時、寿生活館の職員であり、撮影スタッフと街の人々の橋渡しも担っていたそうです。野本三吉というペンネームでも活躍し、寿についての著作もあります。

 

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加藤さんからは、完成から40年経っていま見直すと、映画に登場する人の多くはすでに亡くなっている。その一人ひとりがこの映画で遺書を記すかのように自分の思いを語っている。それがいまの僕らに語りかけてくるように伝わってきた、との感想が語られました。

 

寿で活動されている方々からの発言も含め、記録が持つ重要性、映画館という場でそれを共有できることの意義、アートプロジェクトが地域の歴史性を見据えた取り組みになっているかという問題提起など、さまざまな意見を交わし、共有することができたと感じています。

 

ご来場くださった方々、ご協力くださった方々、本当にありがとうございました!

今回の上映をきっかけに、それぞれの映画がまたさまざまな場所で観られていくことに繋がれば本当に嬉しいです。

 

 

「どっこい! 人間節 寿・自由労働者の街」について

2017.10.29 Sunday

「どっこい! 人間節 寿・自由労働者の街」、この映画の魅力をどのように伝えればいいかずっと考えていましたが、ようやく僕なりの言葉が見つかりました。

 

これは美しい映画です。

 

「バカやろう!」と怒鳴りながら、相手の哀しみを思いやる気持ち。
自らの弱さを隠すこともしない男たちの生き様。

 

各々が人間存在について語る言葉は、まるでドストエフスキーの小説を彷彿とさせます。
そんな、儚く、美しい映画です。

 

今回は、映画の舞台である寿町にもっとも近い映画館、横浜シネマリンで上映します。
支配人の八幡さんは大の映画好き。昨年寿町でこの映画を一緒に見てからというもの、会うたびに「飯田さん、『どっこい! 人間節』をうちでぜひ上映しましょうよ」と言われ続けました。
もちろん僕も同じ気持ちで、この企画を立てました。

 

シンポジウムでご登壇頂く加藤彰彦さんは、撮影当時、映画の中心場所となる寿生活館の職員であり、撮影スタッフと街の人々の橋渡しの役割も担っていたそうです。野本三吉というペンネームでも活躍し、寿についての素晴らしい著作もあります。


小川プロダクションといえば、日本のドキュメンタリー映画史に燦然と輝く存在で、前期の三里塚シリーズと後期の山形での作品が有名です。
「どっこい! 人間節」はその間に埋もれがちですが、いま、横浜から、この作品の再評価を始められたらと思っています。

 

どうか、その瞬間にお立ち会いください。

 

11/3横浜シネマリン「ハマを見つめたドキュメンタリー映画 ―変わりゆく街、子どもたち」

http://cinemarine.co.jp/yokohama-documentary/

 

映画「日曜日の子供たち」に映っている方々を探しています

2017.10.17 Tuesday

(c)yasuhiro hotta

 

ドキュメンタリー映画「日曜日の子供たち」(1980年/103分 監督:堀田泰寛)は、1972(昭和47)年11月から1975(昭和50)年1月にかけて、鶴見区の小野町付近の海辺の空き地(現在の横浜市鶴見資源化センターの辺りです)にやってくる子どもや大人を撮影した映画です。特に小学生が多く映っており、その子らは現在40代後半から50代になるはずですが、お名前等は一切わかりません。

 

私たちは、11月3日(祝)に横浜シネマリンという映画館で、「ハマを見つめたドキュメンタリー映画 ―変わりゆく街、子どもたち」という特集上映を企画しています。ここで「日曜日の子供たち」を上映するにあたり、ここに映る、かつての子どもたちを劇場にご招待し、一緒に映画をご鑑賞頂けたらと考えております。

 

映画のメインビジュアルに使われている上記の子どもたち以外にも、多く子どもたちが映っています。

ご確認頂けるよう、映画に映る子どもたちの顔写真をまとめありますので、昔そのあたりでカメラを向けられた覚えがある方は、ぜひお知らせ頂けましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

 

連絡先:映像グループ ローポジション (担当:飯田)
    〒231-0033 神奈川県横浜市中区長者町4-10-1-204
    電話:045-228-7996 電話&FAX:045-228-7976 
    E-mail:low-posi@nifty.com

「ハマを見つめたドキュメンタリー映画 」チラシ完成!

2017.09.13 Wednesday

11/3の特集上映「ハマを見つめたドキュメンタリー映画 ―変わりゆく街、子どもたち」のチラシができあがりました。

デザインは土屋トカチです。これから宣伝を頑張ります!

 

 

11/3『中華学校の子どもたち』上映に向けて

2017.09.06 Wednesday

飯田です。このところ、11/3の特集上映「ハマを見つめたドキュメンタリー映画 ―変わりゆく街、子どもたち」に向けた準備を進めています。

昨日は『中華学校の子どもたち』の舞台となった横浜山手中華学校へ行き、映画の中で子どもたちの担任をされていた馬 晶先生にお会いし、トークのゲストを引き受けて頂きました。

 

横浜山手中華学校は映画撮影後の2010年に新校舎が完成し、現在は石川町駅前にあります。新校舎は広々とした立派なもので、華僑の方々の長年の頑張りと学校への思いを感じました。

 

馬先生自身も横浜山手中華学校で学び、教壇に立つようになったということで、トークでは先生の子ども時代から現在に至る、学校や街・子どもたちの変化などもお話頂けたらと思っています。

 

この日は監督の片岡希さんも同行してくれたのですが、校内のあちこちで先生方と親しく挨拶を交わしていて、完成後も丁寧なお付き合いを続けている様子が感じられました。

横浜での久しぶりの上映を先生方が喜んで下さっていることも感じ、あらためて多くの方にご覧頂きたいと思いました。

 

映画に登場する子どもたちにも声をかけてくださるとのことでしたので、もしかしたら11/3当日は、大きくなった子どもたちにも会えるかもしれません!
かつての自分たちの姿を見て何を思うか、なんてことも含め、楽しみは尽きません。

 

映像サークル「風の集い」9月7日(木)開催

2017.09.01 Friday

久しぶりに「風の集い」を開催します。
今回は鈴木敏明さん、高橋愼二さんの新旧2本の作品をご本人たちとともに鑑賞します。

どちらも興味深い作品ですので、ご都合つきましたらぜひご参加ください。

 

作品:『大蔵村、踊る男』&『迷宮を通り抜けて 画家・石原峯明』
日時:9月7日(木) 17時30分より
場所:映像グループ ローポジション

 

『大蔵村、踊る男』(1999年/35分)
 監督:鈴木敏明 撮影:常田高志、松丸武彦

 

 

<監督より>
この村は何か特別な時間軸をもった不思議な村だ。現代社会の様々な問題にさらされながら、前近代をしっかりと抱え込んでいる。曲がった腰には、個の寿命をはるかに越えた時間が蓄積されている。この村には世界の全てが在るように思える。だからこの村は、私に強く今を意識させる。だからもうしばらくこの村にこだわることにしよう、と思う。

 


『迷宮を通り抜けて 画家・石原峯明』(2017年/47分)
 監督・撮影:高橋愼二

 

 

<監督より>
この映像はひとつの映画として完結させたものでなく「にしぴりかの美術館」で行われた「迷宮を通り抜けて〜外はまだ夜だった 石原峯明回顧展」(2007.3~7)の会場で石原さんの作品とセットで見てもらうために急遽制作したものです。石原さんが平川病院のアトリエに参加してからの、晩年のアルバムのようなものです。

 

76年の生涯の大半を精神科病院で過ごした石原さん。まさに病棟の中から迷宮を通り抜けてきた人生を送りました。「病んでみて初めていろんなものが見えてくるようになった」と言う石原さん。石原さんの残した厖大な数の作品の一つひとつに石原さんの世界が広がっています。

 


定員:12名
参加費:無料(飲食は各自持ち寄り)
申込:映像グループ ローポジション low-posi@nifty.com TEL:045-228-7996

 

<映像サークル「風の集い」について>
映像サークル「風の集い」とは、ローポジションが開催しているドキュメンタリーの作り手仲間を中心とした集まりです。
それぞれ自作を持ち寄り、鑑賞と対話を通じ、お互いに学び合う場を目指しています。
作り手に限らず、ローポジションの活動や映画製作に興味のある方のご参加も歓迎します。

 

※曜日を間違えて投稿してしまいましたので訂正します。9月7日は(金)ではなく(木)でした。

 

特集上映「ハマを見つめたドキュメンタリー映画 ―変わりゆく街、子どもたち」

2017.08.16 Wednesday

昨年の特集上映「ハマのドキュメンタリー映画作家たち」が好評だったことを踏まえ、

今年はヨコハマ・ドキュメンタリー映画普及プロジェクトとして、新たな特集上映を企画しました。

1日がかりのイベントですが、貴重なラインアップだと自負しています。ぜひご参加ください。
 


 

ヨコハマ・ドキュメンタリー映画普及プロジェクト2017

「ハマを見つめたドキュメンタリー映画 ―変わりゆく街、子どもたち」

 

 

時代とともに街は変貌し、子どもたちも変わりゆく。

「横浜」を見つめたドキュメンタリー映画とトーク&シンポジウムを通じ、

過去と現在、他者とあなたの眼差しが交錯する。

 

 

2017年11月3日(金・祝) 会場:横浜シネマリン

 

 

10:00〜『中華学校の子どもたち』2008年/86分 監督:片岡希)

      ※上映後に片岡希監督+馬 晶さん(映画出演者・横浜山手中華学校職員)によるトークショー

 

 

おはよう。ニーハオ。さようなら。日本語と中国語、どちらも話す子どもたち。

在日華僑・華人のため1898年に創立された横浜山手中華学校。

小学部1年生の日常を3年にわたって記録する。

成長を見守る大人たちの思いに触れながら、子どもたちは中華街を縦横に駆け抜ける。

私たちが知らない、横浜における華僑・華人の歴史、現在が見えてくる。

 

 

12:30〜『日曜日の子供たち』(1980年/103分 監督:堀田泰寛)

      ※上映後に堀田泰寛監督+ゲスト(未定)によるトークショー

 

(c)yasuhiro hotta


舞台は横浜市鶴見区の空地。周囲には工場が立ち並び、時に光化学スモッグが生じ、

岸辺に汚れた海水が押し寄せる。そんなことはお構いなく、日曜日になると遊びに来る子供たち。

走り、取っ組み合い、海に石を投げ、海を見つめる・・・。

子供たちの背後にある何かの予感。映画キャメラマン・堀田泰寛が通い続け、撮り溜めた記録は、

8年をかけ、鈍く輝く抒情詩のような映画に結実した。

※関連記事

 

 

15:00〜『どっこい! 人間節 寿・自由労働者の街』(1975年/121分 構成・編集/小川紳介)

 


山谷、釜ケ崎と並ぶ日本三大寄せ場のひとつ、横浜・寿町。

90軒の簡易宿泊所が密集し、5000人前後の人々が暮らす。

小川プロの若手スタッフが約10カ月住み込んで撮影した。

高度経済成長の中で取り残され、使い捨てられる労働者たち。

貧困、差別、偏見、孤独、絶望・・・。野垂れ死が当たり前にある状況の中で、

労働者たちは語る。自分史を。そしてわずかな希望を―。
 


17:01〜 シンポジウム「変わりゆく街、子どもたち ―ハマを見つめたドキュメンタリー映画」
 

パネリスト:加藤彰彦(横浜市立大学名誉教授/前沖縄大学学長)、片岡希、堀田泰寛、中村高寛(映画監督) 進行:飯田基晴

18:30終了 ※シンポジウムは本企画の鑑賞券をお持ちの方はご入場頂けます。


料金:一般1,200円 シニア/学生1,100円 障がい者1,000円 高校生以下800円
   3回券3,000円   ※各回入替制 横浜シネマリン会員割引なし、カップル割なし

 

主催:映像グループ ローポジション
協力:横浜シネマリン
助成:横浜市地域文化サポート事業・ヨコハマアートサイト2017


   

 

お問い合わせ:映像グループ ローポジション(045-228-7996/lowposi@nifty.com/www.lowposi.com/)

       横浜シネマリン(045-341-3180/http://cinemarine.co.jp/

 

ヨコハマ・ドキュメンタリー映画普及プロジェクトとは?
横浜でドキュメンタリー映画文化の普及・発展を目指していきます。

それはドキュメンタリー映画という表現・コミュニケーション手段に、社会の風通しをよくしていける可能性があると信じているからです。

「夜明け前の子どもたち」を観て

2017.03.04 Saturday

飯田です。遅ればせながら、今年の大倉山ドキュメンタリー映画祭の上映作品「夜明け前の子どもたち」を観ました。

 

なんだか呆然としています。

 

1968年、いまから49年も前に作られた映画です。見た目は作りが古く思えることもあります。でもそれ以上に、「若々しく」感じられるのです。

 

もしかしたら、私たちはちっとも進んでいなくて、「映画」も「福祉」も見た目ばかりよくなって、本質的なところでは衰えているんじゃないか? わかったふりばかりしてるのではないか? そんな疑念が矢継ぎ早に浮かんでしまいました。

 

「存在に向き合う」、それは福祉でも映画でも、根源的な姿勢だと思います。

そこに立ち向かい、道を切り開くのだという意思が、この映画にはみなぎっています。

 

あなたたち、なにか大切なことを忘れていませんか?

 

そんな問いかけを映画から受け取った気がしてなりません。

 

大倉山では3/25に上映します。

http://o-kurayama.jugem.jp

 

偶然の一致ですが、下高井戸シネマで毎年行われている、優れたドキュメンタリー映画を観る会でも、今年の上映作品に選ばれています。

http://www.shimotakaidocinema.com/schedule/tokusyu/doc.html

 

いまの時代に見直すことを求められる作品なのかもしれません。

 

ご都合つきましたらぜひご覧ください。

多くの方とこの映画を分かち合えたら嬉しいです。

 

記録映画「日曜日の子供たち」作品紹介

2015.02.17 Tuesday

飯田です。来月の第8回大倉山ドキュメンタリー映画祭の上映作品のひとつ、「日曜日の子供たち」はおよそ35年ぶりの一般上映となります。個人的にはリティ・パニュの「消えた画」と並んで、ぜひ多くの方にご覧頂きたい、とても好きな作品です。
詩的で独創的類似した映画が浮かばず、僕は土門拳の写真集「筑豊のこどもたち」や荒木経惟の写真集「さっちん」を思い出しました。
どんな作品か興味を持たれている方もいると思いますが、インターネット上にはほとんど情報がありませんので、監督の堀田泰寛さんから情報を頂き、ここに掲載いたします。
ちなみに映画の舞台は鶴見の埋め立て地で、会場の大倉山記念館から直線距離で7kmほどの場所だそうです。
撮影は70年代ですので、ここに登場する子どもたちはいま50歳前後でしょう。かつて子どもだった多くの方々に、いまご覧頂きたい作品です。


1980年度 記録映画作品/16mm/黒白スタンダード/1時間43分
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■ 記録映画「日曜日の子供たち」の始まり
 1972年のある日曜日、私は撮影で京浜工業地帯に行った。工場街の道を子供が四人歩いていた。私はその子供等を撮りたいと思い近付き、その子供等の一人に話しかけた。しかしその子は黙っていた。更に話しかけた時、その子の「何か」が、私を深く刺し、私は撮る言葉を失ったまま、その場に立ち尽くしていたことを憶えている。それは何だったのか、いくら思い詰めてもおぼろげである。多分「撮ってもいいかい」「撮りたければ、勝手に撮ればいいだろう」と言い合った事も含めて、「何か」。
 私はすっかり自信を失っていた。私は卑屈な思いでその子等を追い、その子等と話をした。「何処へ行くの」「海」「何しに」「魚を捕るんだ」「魚いるの」「いない、兄さんが言ってたけれど四年前は魚が沢山いたんだって」。
 私は思い詰め、その子らの前に立ち、手にしていた16mmカメラを構え、回し、そのまま回り込んで、遠ざかって行くその子供等の背をじっと見ていた。その時、私の中を過ぎったものは、突然子供たちが死んでしまうのではないかという危機感に対する慄きであったような気がする。そしてこの日の事が、ここの子供たちを撮ろうとした、撮り続けたきっかけで在った事は確かな事である。

 当時、工場から排出される煤煙や自動車の排気ガスは空気を汚染し、光化学スモッグを発生し、子供らを襲った。工場や家庭から排出される廃液は、川を、海を、汚染していった。子供等はその中で生ていた。目に見えない汚染に侵され、蝕まれていった。小児喘息を発症し苦しむ子供等がいた。

 私は、四人の子供等と出会った場所を探した。どうしたことか見つからなかった。探しあぐねていると、不意に工場街を通る道に出た。その道は広くどこまでも伸びていた。あの子供等を見たのは、ここの様な気がした。その道を行くと海だった。広大な空地が下手にあった。瓦礫や草や得体の知れない構造物があった。立入禁止の札が付いた有刺鉄線が張り廻らされていたが、錆びて切れ落ちていた。その空地は、子供等にとって海に面した格好の遊び場だった。 (1980年4月8日 堀田泰寛)

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■この映画を観た三好さんが、「この詩は『日曜日の子供たち』を詠った詩です!」と、
インドの詩人ラビンドラナート・タゴールの詩の一編「海辺で」を、私に見せた。

「海辺で」
はてしもない 世界のうみべに
こどもたちが あつまっている。
はてしもない 大空は 頭のうえでうごかず
みずはやすみなく みだれ さわいでいる。
はてしもない 世界のうみべに
こどもたちは あつまり
さけび おどっている。

こどもたちは 砂で家をこしらえ
からっぽの 貝がらであそぶ。
かれた 葉っぱで 小舟をあみ
ほほえみながら うみにうかべる。
こどもたちは 世界のうみべを
あそびばにする。

こどもたちは およぎもしらず
網をなげて さかなをとるわざも しらない。
真珠とりは 真珠をとりに
みずにもぐり あきんどたちは
船をはしらせているのに
こどもたちは こいしをあつめては
また まきちらす。
かくれた宝を さがそうともせず
網をなげるわざも しらない。

うみは笑いごえをたてて もりあがり
なぎさのほほえみは あおじろく光る。
死をあきなう なみも こどもたちには
まるで ゆりかごをあやす ははのように
意味のない 小唄をうたい
うみはこどもたちと たわむれ
なぎさのほほえみは 白く光る。

はてしもない 世界のうみべに
こどもたちは あつまっている。
嵐は道もない おおぞらにほえたけり
船は航路(みちすじ)のない みずにくだけ
いたるところに 死があるのに
こどもたちは あそぶ。
はてしもない 世界のうみべに
こどもたちの 大きなあつまりがある。
(世界現代詩文庫1 アジア・アフリカ詩集 高良留美子 訳・編 土曜美術社)より

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[企画・撮影・監督・編集] 堀田泰寛
[音楽・ピアノ演奏]宮沢明子
[製作]四宮鉄男・三木實・.堀田泰寛[録音]本間喜美雄[ネガ編]川岸喜美枝[現像]ソニーPCL
[協力]グループ現代・青山録音センター・日本ECアーカイブ・フレールアド・ソニーPCL・他多くの方々
問い合わせ Email cosmos3945@gmail.com  Fax 03-3393-0428(堀田泰寛)

[後記]2011.3.11福島第一原発破壊事故により、大量に撒き散らされた放射能の汚染は、海に、山野に、人々の住む家々に、畑に、花に、鳥や虫に、犬や猫に、子供らに、妊婦に降り注いだ。人々の失ってしまった故郷の山野、住む家、田畑、それらの前に立った時、失ってしまったものの余りにもの大きさに、言葉を失った。高放射線量が体の細胞を貫く、体がじわーっと熱くなった。目に見えない放射線が体を侵し貫いたのだ。私は、この事態にキャメラを向けなければならない。と怒りが込上げた。(堀田泰寛)

 

台湾の収容施設の犬たちを描いたドキュメンタリー映画「十二夜」(Twelve Nights)がYouTubeで全編公開!

2015.02.04 Wednesday

飯田です。昨年の夏に韓国の国際動物映画祭で出会った、映画「十二夜」Twelve Nights の監督のRayeさんより、YouTubeで映画全編を公開したとお知らせを頂きました。

この作品は台湾で大きな話題となったそうで、およそ23万人が劇場へ足を運んだそうです。
全人口が約2300万人ですから、およそ100人に1人が劇場で鑑賞したことになります。
その後DVDも多くの人が鑑賞しているそうですし、2月1日からYouTubeで公開をはじめ、3日間ですでに2万近いアクセス数になっています。

日本の施設を見慣れた僕でも胸が痛くなるほど悲惨な環境ですが、その中の犬たちそれぞれの表情、個性をつぶさに捉えた素晴らしい作品だと思いますし、毎日この現場に通い続けた彼女たち映画スタッフに敬意を覚えます。

日本の犬猫の状況を知るだけでもつらいのに、海外の更に悲惨な状況など観たくない、という方も多いかもしれません。

でも、どこで生きていても、犬は犬です。
日本の犬だけ幸せならそれでいいとは、僕には思えません。
アジアの他の国の状況について知ることも、大切ではないでしょうか。

この作品を通じて、そんな思いを共有してくれる人が増えることを願っています。


日本語字幕はついていませんが、セリフやナレーションもなく、ごく簡単なテロップが中国語と英語で出るだけですので、内容はほとんどわかると思います。
およそ100分の作品ですので、時間と気持ちの余裕があるときに、じっくりとご覧頂ければ幸いです。




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写真は韓国の順天湾国際動物映画祭にて、監督のRayeさんと